内観の地平から~金沢美術工芸大学大学院博士後期課程研究発表展2017年02月20日

昨日は21世紀美術館で開催されている、金沢美術工芸大学 大学院博士後期課程研究発表展に行ってきました。
今回は今年で後期課程の満期を迎えます、橋本知成氏の作品展示について記載します。




一階第1室メイン会場である。タイトル「内観の地平から」
そのエントランス正面には2016年の静寂の振り子を連想させる、円錐形状の作品が鎮座。
ただ、先端は平たんにカットされ安定的な台に載せられている。
この作品だけでも来訪者を圧倒し驚き与える存在感。
おもわず、「おお」と小声を出してしまったのは内緒である。


円錐形状の不安定さも垣間見えるが、実の所見ていてふと落ち着くところもある。
まるで、各々の心の内面を写したかのような作品。まさに内観と呼ぶにふさわしい作品ではないか。

その釉薬の色合いと肌合いもあいまって、心の表情を鑑賞者がいかようにも見せるその表情の変化も見ものである。



その興奮を胸に第一室内へ進む。

まず、先端の尖った円錐形状の作品が目をひく。
宇宙船か流星であろうか?現実的には鉛筆の先端の様にも見えるが、 その鋭利な先端が意味するものは何か?鑑賞者の興味をわしづかみにする。





その先右側には、これまでのパンドラから内観シリーズの集大成ともいえる巨大な円筒。

錆びて朽ちたボルトが抜け落ちたアンバランスな表情とひび割れた胴体。
巨大な作品ではあるが、どこか不完全で心がざわつく不安な要素が垣間見れる。




その左手にはこれも寸胴ながら、やや背の低い作品。先の作品よりも背が低い分安定して心の揺らぎが落ち着く。

ほっとするも、実の所天板には大きなひび割れがあり少し落ち着いたかに見える鑑賞者の心をあざ笑うかのような演出である。
(ただし、天板なのでだれも見れないが。)





展示室内は、私見であるが宇宙にさまよっている錯覚にも陥る。
会場の広さを巧く使い、壮大な物語を鑑賞者に連想させる作品群である。

ただ、こうして書くとおどろおどろしい作品の印象を与えてしまうが、各作品とも釉薬の作り出す様々な表情と、炭化しただけの区分との面白さも併せ持つ。

会場内は暗くして演出しているが単体で明るい場所で見ても、朝、昼、夕とそれぞれの表情を見せて楽しい物ではないかと思う。



2015年の「明日への対話 Dialogue for tomorrow 」から橋本作品を見てきたが、造形の面白さと組み合わせからボルトと焼き物という異種との出会い。そしてそのつながりと融合。パンドラでは得体のしれない大きな作品群を作り上げ、内観シリーズでそれを心の内面を写すまでに昇華させた成長は見事である。

この金沢の地に縁があり、橋本作品の昇華を間近で見る事ができた事を氏に感謝する。また、氏のこれからのさらなる発展と活躍を期待しこの筆を擱く。

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